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すし考

日本料理を代表する寿司。しかし寿司が海外に紹介されてから、寿司は従来の枠にとらわれず現地の人に合ったスタイルに独自の変化を遂げています。ここではアメリカ東海岸とフランス、おもにパリでの状況から思ったことを述べてみます。

アメリカ

アメリカで独自のメニューとして確立された物にカルフォルニア巻きがあります。日系移民の多い西海岸でアボカドを使ったこのカルフォルニア巻きが発明され、いまや多くの寿司レストランで提供されています。もちろん東海岸でも有名な巻きの一つです。

アメリカにおいては日本人以外のアジア人もアメリカ国内での寿司の伝播に深く関わっています。

現在におけるアメリカは日本に比べると中国からの移民が多く、彼らが生活手段として始める方法の一つが中華レストランの経営。しかし、新たにアメリカに移民した中国人がすぐに中華レストランを経営するのは容易ではありません。小さな街ですら中華レストランはたいていあり、そこで同じように中華レストランを始めても競争になるからです。

チャイナタウンでもないのに同じ通りの数十メートル先にまた中華レストランがあるとか、同じショッピングモールの中に中華レストランが2つもあるといったことも珍しくありません。

このような過当競争の中で、ある者は競争を避けるべく日本料理レストランを経営し、ある者はさまざまな工夫を凝らして自分の中華レストランを過酷な生存競争から勝ち抜く努力をしています。

後者の例としてはバッフェ(食べ放題)形式にしている中華レストランがあります。食べ放題にするメリットは客により多くの種類の中華料理を提供し、飽きさせないことや、中華料理以外のものを提供することで客層に幅を持たせていることが考えられます。

そういった状況の中で寿司も提供している中華レストランは少なくありません。寿司はアメリカ人にも人気のあるメニューの一つです。中華料理と一緒に寿司も食べたいという客も多くいます。(ただし刺身などは食べ放題だと元が取れないのでたいていは巻きを提供しています)
日本料理として寿司を提供するのが目的ではなく、他の中華レストランとの差別化を図るために寿司を提供しているわけです。

つまり日本人による寿司レストランの寿司、過当競争を避けた中国人による寿司レストランの寿司、そして過当競争の中で工夫の一環として中華レストランで提供される寿司と、実はその背景には食事としての料理以外にさまざまな要因が関わっています。

このような条件下、提供される寿司も日本とはちょっと違いがあります。さきほどのカルフォルニア巻きもそうですが、イクラやウニ、イカといったものはあまり出されません。アメリカ人にはあまり評判が芳しくないのが要因です。また理由はよくわからないですが、卵巻きがでてきません。巻きも海苔が内側になっているのもあります。
またネタとシャリの間にわさびが入っていないのが特徴です。わさびが苦手な人のために入れていないのです。わさびは皿の縁にこんもりと盛って出されます。しかしアメリカ人やフランス人はカレーのような辛さは苦手でも、わさびは好きという人がけっこういます。なかには醤油が黄緑色に濁るほどわさびをいれる人もいます。

このように現地の状況に応じて変わるとき、それを「寿司」と呼ぶべきか、"SUSHI"と呼ぶべきかで考え方がかわるでしょう。インドの"CURRY"と日本の「カレー」が全く違うように。

フランス

フランスでも日本人以外の経営による日本料理レストランはあります。ただパリにおいてはアメリカとはちょっと事情が違います。

フランスはベトナム系の移民が多いので、ベトナム料理レストランも多く、また中華料理だけでなく、ベトナムやタイ料理などを一緒にした「アジア系」レストランとして経営をしているところもあります。アメリカほど中国人移民同士の過当競争は激しくなく、一部の食べ放題形式のレストラン以外、多くの中華レストランは寿司を提供していません。

アメリカに比べて中国移民の少ないパリではまだこの現象が顕著には起きていないと思われます。

いずれにせよ、アメリカでもフランスでも寿司レストランはアジア人が経営したり料理したりする場合がほとんどですが、フランスではちょっとアメリカと事情が違っていそうです。最近、フランス人シェフ自らがプロデューサーになってさまざまなオリジナル寿司を作り始めています。その中には米や海苔を使わず、バナナを使った巻きなどもあります。

日本人からすれば「それはもはや寿司とは言えないだろう」となるところですが、「寿司」とするか、"SUSHI"とするかで、奇抜なアイディアによる「変化(違う食べ物)」か、新たな解釈による「進化」ととるかは各人の判断によるところとなるでしょう。

まとめ

将来、寿司のグローバル化が進み、日本人が「寿司とは何か?」を考え、国内だけでなく海外の状況にも目を通しておかないと、日本の従来の寿司が他のSUSHIと比較されるために「伝統寿司」と呼ばれるようになるかもしれません。これは不可抗力で自然の流れとなるのか、そして日本人がその流れに抗うのか、認めるのかは意見の割れそうな事柄となりそうです。

参考:
ラーメン考
カレー考

COMMENTS

No title

アメリカの怪しい寿司屋は懐かしいですね。ボストンロールとか、ドラゴンロールとか、握り寿司よりも巻寿司が人気があった気がします。自分がいたワシントンDCあたりは韓国系が凄く多いので、スパーシーなコチュジャンや唐辛子入りの寿司もよく見かけました。自分の口には合いませんでしたが(やはり寿司にはわさびだよなあ、と偏狭かもしれませんがそう思います)。あと酢が入っていないものもあり、これはさすがに寿司なのか? と感じたことも多いです。バッフェスタイルで中華料理と一緒のところなどは、こういう感じですよね。DC郊外のロックビルというところでドクト(独島)寿司という名の店を見つけた時は驚きました。入るのが怖かったので入りませんでしたが・・・

まあ、当たり前なのですが、日本人が経営しているところは美味しいです。地方都市に行って寿司やに行く時、美味しいかどうか見分ける方法があります。緑茶がティーバッグで出てきて、有料のところは概しておいしくないです。美味しいところは無料でそれなりの緑茶が出てきます。

懐かしくて長々と書いてしまいました。カリフォルニア巻はパーティーなどのために作るのにうってつけでしたね。

No title

けがわさん、コメントありがとうございます。

わさびの話で思い立ったのでわさびについての話を記事に追加しました。
ティーバッグの話はたしかに自分もそんな経験をした覚えがあります。

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