ウィッティー・クロノス

去年のゲームイベントで異様な盛り上がりを見せていたゲーム、ウィッティークロノス。

クロノスとは時間の神。Witty Editionというメーカーから出ています。このメーカーはゲーム名にウィッティー~という名を冠するゲームをいくつか出しています。
このウィッティーシリーズはどちらかというと短時間で終わるライトなパーティーゲームがメインであまり興味がなかったのですが、このウィッティークロノスに限ってはトリックトラックでの評価も高く、気になっていました。3人から5人まで、チーム戦では10人までプレイできます。

カードと色分けされた砂時計。

ラウンド勝利トークンなど

神カード
ルール
準備
各プレイヤーは同じ色の砂時計を2つ受け取る。
全てのカードを一つにまとめプレイ人数に応じて以下のように山札をつくる。(裏向きのまま)
プレイ人数 山札の数*
3人 6つ
4人 7つ
5人 8つ
*プレイヤーの数+3。各山札のカードの枚数は必ずしも同じでなくてもいい。
開始
プレイヤーのひとりが山札全体を表が見えるように一つずつひっくり返す。
注:山札の一番上のカードだけが見えるようにする。
各プレイヤーは以下の要領ですぐにプレイできる。

自分の砂時計をひっくり返して表向きになっているカードの上に置く。
他人が砂時計を置いたカードの上にも自分の砂時計を置くことができる。
カードの上に置いた砂時計の砂が流れきるまで、その砂時計を動かすことはできない。
注:
・手元に戻す場合はそのまま、他のカードに置く場合は砂時計をひっくり返す。
・砂時計の砂が流れきっても、必ずしも動かす必要はない。
・同じカードの上にそのまま砂時計をひっくり返してまた置くことは出来ない。
自分の置いた砂時計の砂が流れきった時、カードの上にその砂時計しかない場合、砂時計を手元に戻し、一番上のカードを入手することが出来る。
入手したカードは表向きにしたまま上に重ねる。(最後に取ったカードが見えるようにする)
ラウンドの終了
以下のうち、どれかが発生した時点で直ちにラウンドを終了する。
・誰かがハデスのカード(後述)を入手した
・あるプレイヤーの総得点が100点以上になった
・山札の一つが尽きた
ラウンドの勝敗
そのときの最高得点者がラウンドの勝者。 同点の場合、該当者全員が勝者になる。
勝者はラウンド勝利トークンを1つ入手する。
ゲームの勝敗
ラウンド勝利トークンを3つ入手したプレイヤーの勝ち。
神カードの効果

ハデス
誰かがこのカードを入手した時点で直ちにラウンドを終了する。

ヘルメス
このカードを入手したプレイヤーは自分が手に入れたカードの山を他のプレイヤーのカードの山と交換することができる。カードを入手しても交換したくなければしなくてもよい。 その後カードは捨てる。

ヘパイストス
このカードを入手したプレイヤーは他のひとりのプレイヤーの砂時計1つを取り除くことができる。 その後カードは捨てる。取り除かれた砂時計はそのラウンドが終了するまで使用できない。

ケルベロス
このカードを入手したプレイヤーは他のひとりのプレイヤーの入手したカードの山から一番上のカードを捨てることができる。 使用後は取り除いたカードと一緒に捨てる。
いずれのカードも入手した時点で効果を発動する、あるいは発動させなければならない。
その他、説明書には砂時計を倒したり、砂が流れきる前に砂時計を動かした場合のペナルティなどが書いてありますが、基本的には以上のルールでプレイできます。
チーム戦については「続きを読む」参照
所感
まずは多くのゲーマーがあまりのルールの簡単さにもの足りなさを覚えるであろうことは否定しません。
基本的なルールの説明に必要な時間は1分。神カードの説明を入れても5分掛かりません。
しかしそのシンプルなルールは、そのままこれが物足りないゲームであると物語るわけではありません。バックギャモンや囲碁のようなゲームが好きな人ならより楽しめると思います。
ただし、がちがちのアブストラクトではなく、このゲームは打つべき手、打てる手が刻一刻と変化していくのが独創的です。といってもジャングルスピードほどの反射神経が必要とされる訳ではありません。
砂時計
砂時計を使ったゲームは多々ありますが、通常それは時間を計るためのアイテムです。このゲームでは砂時計を使ってアイテム(カード)を集めます。
他人の砂時計が置いてあるカードの上に砂時計を置くということは「このカードは渡さない。後で自分が頂く」という意思表示になっています。
つまり砂時計を置くという行為が攻防一体のアクションになっているというのが特徴です
時に意図せずに、時に意図的に同じカードに置かれた二つの砂時計の砂が流れ切った状態になることがあります。この時の砂時計の所有者のアクションは他のプレイヤーが見ていると面白いです。砂時計を後から置いたプレイヤーは自分が獲れるものと砂時計を置いたのに、前に砂時計を置いたプレイヤーがその砂時計を動かさない限りカードを取ることができません。どっちが先に砂時計を動かすか(=カードをあきらめるか)、観察するのは笑えます。おそらくゲームに参加していない人が見ても笑えるでしょう。
間(ま)をどう活用するかはプレイヤー次第
このゲームでは全員が砂時計を置いた場合などにちょっとした間(ま)があります。この間をどう使うかはプレイヤー各人の自由です。
寡黙に次の一手を考えるのに集中するために使うか、あるいは「(カードの上にある)この砂時計をどかしてくれたら、(別のカードの上にある)自分の砂時計をどかしてあげよう」といった交渉[あるいはブラフ]をしたり、またはジョークや面白い話をして場の雰囲気を和ませたり[他人の集中力を削いだり]することもできます。
ただ交渉するにもじっくり時間をかけて相手と話し合うという訳にはいきません。
ゲームはリアルタイムで進行するので他のプレイヤーはおかまいなしにプレイを続けていきます。
交渉はいかに簡潔に、素早く相手を説得できるかが問われます。
まさに時間(とき)の使い方を制するものがゲームを制すと言ったところでしょうか。
神カード
神カードの威力は強力なので、とくにトップを行くプレイヤーはこのカードを巡る他のプレイヤーの動向に注意しなければいけません。ゲームに慣れないうちは自分の砂時計ばかり気になってしまい、他のプレイヤーが入手した神カードによって苦杯をなめるということがよく起こります。説明書では初めてプレイする人がいる場合、最初のラウンドはこの神カードを使わないことを薦めています。
ブロックとそのジレンマ
だれかが砂時計を置いたカードを取られたくなくて自分の砂時計を置けば、他のプレイヤーは別のカードを入手する機会を得ます。よく考えると砂時計を置くのは自分でなくてもいい訳です。したがって誰がカードの上に砂時計を置くのかというジレンマが発生します。
誰かが置いてくれるだろうと思っても砂時計の砂が流れ落ちるまで砂時計は動かせないのでそういったこと(=他のプレイヤーの砂時計の砂の量)も考えてプレイしなければいけません。
まとめ
砂時計とカード。よくぞこれだけでこんなゲームを作ったものだと感心します。
アブストラクトのようにプレイするも良し、あるいは交渉やブラフをするのも良し、はたまた会話をしながらパーティーゲームのように楽しむのも良し、このゲームはそのシンプルなルール故、「ゲームの楽しみ方は各個人で考えるように」といった宿題を課しているようにも思えます。ルールにあまりに受動的だと漫然とプレイして「ふーん」で終わってしまいます。
また神カードの存在により、ゲームが変化に富み、毎ラウンド同じような展開にならないように工夫されています。あえて欠点を挙げるとすれば2人ではプレイできないことでしょうか。まあ、これはルールから考えると仕方ないことでしょう。
ヘビーゲーマーが一回のプレイで熱狂するタイプのゲームではありません。噛めば噛むほど味が出てくる、そんなタイプのゲームです。
チーム戦(6、8、10人用)
ゲームからヘパイストスの神カードを除きます。 2人一組で 同じ色の砂時計を使ってチームプレイをします。基本的には通常ルールと同じで、山札の数はチーム数+3です。各自自分の砂時計一つだけ使ってプレイします。獲得したカードは各自で確保します。
ラウンドの終了条件も基本ルールと同じですが、得点はチームの中で最も得点の高いプレイヤーの点を考慮します(チームの総得点ではない)。
ラウンド勝利トークンを3つ入手したチームが勝利します。
ゲームからヘパイストスの神カードを除きます。 2人一組で 同じ色の砂時計を使ってチームプレイをします。基本的には通常ルールと同じで、山札の数はチーム数+3です。各自自分の砂時計一つだけ使ってプレイします。獲得したカードは各自で確保します。
ラウンドの終了条件も基本ルールと同じですが、得点はチームの中で最も得点の高いプレイヤーの点を考慮します(チームの総得点ではない)。
ラウンド勝利トークンを3つ入手したチームが勝利します。
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