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緑の遊歩道と瀕死の人々

かつてバスティーユには地上にバスティーユ駅がありここから郊外へ鉄道が走っていました。その後、鉄道は地下を通ることになり、地上にあった駅は解体され、線路は取り払われました。線路の敷かれていた高架橋の下は店に、上は遊歩道になりました。

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プロムナード プランテ(Promenade Plantée)と呼ばれるこの遊歩道、道沿いに花や木々が添えられてジョギングや散歩を楽しむ人々の目を楽しませてくれます。

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途中にはトンネルがあります。


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その遊歩道を歩くと異様な光景に出くわします。とある角の建物の屋根上に奇妙な彫像が並んでいます。

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外側から確認できる限りその数14体。皆同じ方向を向き、一様に苦しげな姿を見せています。

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最後の彫像にいたっては半分欠けていて悲しみに拍車をかけています。

パリアリーナで知られるManolo Nunez-Yanolowskyの作品。彫像はミケランジェロの「瀕死の奴隷(L'Esclave mourant)」がモデルになっています。。

LEsclave mourant
ルーブル美術館にあるミケランジェロの「瀕死の奴隷」。[ウィキより転載]

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後ろから見た彫像群。

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真ん中の空洞はアートなのかコスト削減なのかは知る由もありません。

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目をつぶり、苦悶の表情を見せるその姿は一斉に天に向かって救いを叫んでいるかのようです。

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ちなみに建物の一階は警察署になっています。

「瀕死の奴隷」の彫像群
76 Avenue Daumesnil 75012
メトロ6、14番線ベルシー(Bercy)駅から徒歩5分、またはリオン(Gare de Lyon)駅から徒歩6分。

奇妙な形の家

ルイ・ブライユ通りにちょっとユニークな家があります。

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正面から見ると普通の家ですが。。。

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少し歩いて別方向から見ると、なんと後ろがありません。これはまるでルノワール市場の洗濯場跡のようです。

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しかしよくよく近づいてみるとほぼ鋭角三角形のかたちをした家です。

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反対側から見たところ。やはり普通の家に見えます。

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ルノワール市場の洗濯場跡は完全に「跡」なのに対してこちらは人が住んでいるようです。

いったいどのような経緯でこの家が建ったのかはわかりませんが、家の中の構造やそこでどういう生活をしているのか気になるのは私だけでしょうか?

37 Rue Louis Braille
メトロ8番線ミッシェル ビゾ(Michel Bizot)から徒歩4分

参考:
パリの共同洗濯場跡
パリで一番小さい家

聖エスプリ教会

パリの教会というとたいていはしっかりと独立した区画があって周りとはっきり区別され、「そこに教会がある」ことが初めて来た者にもわかります。

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しかしこの聖エスプリ教会は入り口部分の両側が別の建物に挟まれ、完全に周りと同化したような雰囲気があります。
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普通に通りをまっすぐ見ながら歩いているとそこに教会があることに気づかずに素通りしてしまうかもしれません。

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中に入ると荘厳な雰囲気を感じつつもどこか普通の教会とは違うものを感じます。そう、まるでプラネタリウムの中に入ったような印象を受けます。

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それはこの天井全体をを覆う巨大なドーム。直径22メートル、高さは33メートルあるそうです。
訪れる者の顔を上に向けないわけにはいかなくさせます。

イスタンプールにあるハギアソフィアから着想を得て、建築家ポール・トゥルノンにより1928年から建築が始まり、1935年に完成したとのこと。

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全てが丸みを帯びた曲線で構成されています。

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やや褐色がかったステンドグラス。きらびやかさはないものの、落ち着いた気持ちにさせてくれます。

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入り口の反対側から見る教会。ここから見るとはっきりと教会があることがわかります。

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屋上部分に見えるドームがなんといっても印象的です。


Paroisse du Saint-Esprit
186 Avenue Daumesnil
メトロ6、8番線ドメニル(Daumesnil)駅から徒歩4分

忘れられた砦

古来より外敵の侵入から守るためにパリにはいくつもの城壁が築かれてきました。

City Walls in Paris 2010
現在のパリ市の外側を囲むように築かれたのがティエールの城壁。全長34キロメートル、94個もの砦をもつ長大な城壁でした。この城壁に囲まれる領域が現在のパリ市の範囲のもとにもなっています。

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このティエールの城壁はその後、1919年から1929年にかけてほとんどが取り壊されましたが、一部がまだ遺っています。
そのひとつが、パリ南東部、セーヌ河右岸にあります。一見するとただの壁です。しかしここはかつてのティエール城壁の第一番砦があった場所です。

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かつてはパリ市民を守るために作られたこの城壁もいまでは資材置き場になって落書きがされていました。
付近には家もなく、車の往来の激しい道路沿いにあるので散歩がてら行く場所ではなく、車で走ればまず、気づかずに通り過ぎてしまうでしょう。

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誰一人訪れることのないパリの片隅にパリ市民にも忘れ去られた歴史の1ページが遺っていました。


Boulevard Poniatowski rue Robert-Etlin近く
メトロ14番線クール・サンーテミリオン(Cour St-Emilion)駅から徒歩8分。

参考:
フィリップ オーギュストの城壁 その1

パリの共同洗濯場跡

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アリグル広場からほど近いところに昔の共同洗濯場跡があります。

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GRAND LAVOIR du MARCHÉ LENOIR ルノワール市場の大洗濯場」と書いてあります。両端の数字9はこの洗濯場のあった住所(9 Rue de Cotte)を表しています。

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実はご覧の通り、正面のみで後ろがありません。

この洗濯場跡の今の住所は3 Rue de Cotteとなっています。
 元にあった場所に新しい建物を建てるために取り壊すはめになっていたところ、付近の住民の意向で保存することを決めたそうです。そのため、前にあった場所から数十メートル離れたこの場所へ正面部分のみ移されたということです。

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エミル・ゾラの作品の中でしばしば描かれる共同洗濯場ですが、このルノワール市場の洗濯場は、ヴィクトル・ユーゴの「ある犯罪者の物語(Histoire d'un crime)」という作品の中で実際に登場します。

3 Rue de Cotte
メトロ8番線Ledru Rollinから徒歩7分。またはリオン(Gare de Lyon)駅から徒歩10分。